春の雨の日に

ぜんぶが始まって、ぜんぶが終わった。

夢の皆勤賞

長い夜のお供はみんな眠ることが多いと思う。

私もそうで、長くたくさん眠らないと

次の日まで引きずる。

 

長くたくさん寝ないといけないのに

毎日欠かさず夢を見る。

 

幸せな夢であったり、

日常を切り取ったようなものであったり、

疲れてしまうほど怖い夢であったり。

 

その日の気分とは

特に関わりがなさそうな夢ばかり見る。

 

幼少期から続いているのでよくもまぁ

ネタ切れしないものだ、と

感心することもある。

 

白い人に相談すると

「これを飲むといい」って

薬が渡された。

 

私は毎日見る夢とさよならできると

わくわくしながらその日眠りについたけど

あいかわらずの皆勤賞。

しかも金縛りというおまけ付き。

 

私は膨れながらもう一度白い人を訪ねた。

「ことごとく、ダメだったようですね。

申し訳ない。

次はこれを飲んで見て」

と、別の薬を渡された。

 

 

「この薬は飲むと苦いから、驚かないでね」

って何度も言われた。

でも飲む時たくさん水を口に入れておいたらいいんじゃないか、と思った。

特に気に留めていなかった。

 

その後女の白い人に手渡されるときも

「この薬は苦いから気をつけて」

と、言われた。

水をたくさん口に入れて入ればいい

そう、心の中で言い返した。

 

その夜それを飲む時が来た。

一粒からと言われたが

「大人は二粒からだ」

と書いてある説明書が白い人の手の下からはみ出ていたのを見てしまっていた。

「大人は二粒からだ」

私は迷わず水をたくさん含んだ口に二粒入れた。

 

全く苦さを感じなかった。

 

なんだ、心配性だなぁ。

私はもう大人なのだ。

多少の苦さも美味しい年頃になっているはずだ。

やった、やった、勝ったぞ。

 

そう思いながら眠りについた。

 

 

 

朝日が部屋に降りそそいで目が覚めた。

なんとも言えぬ不快感。

夢は相変わらず皆勤賞で、

口の中がどうしようもないくらい苦かった。

薬の効果が切れていないのか

まだまだ眠い。

でも耐えられない苦さで

私はとりあえずアメをほおばり

また眠りについた。

 

 

なるほど、こういうことだったのか。

飲んだのに戻ってくるのか。

防ぎようがないじゃないか。

 

長い夜と苦い夜に負けないようにしなければ。

夢の皆勤賞は思ってるよりずっとしぶとい。