春の雨の日に

ぜんぶが始まって、ぜんぶが終わった。

雨傘

 

今、私の家の玄関には

雨傘がさしてある。

 

入り口に向かってさしてある。

 

廊下を通るとき、

それを見かけるたび、ふと考える。

 

今、泥棒が入ってきたらどうだろう。

 

鍵を開けることができて

チェーンもすいすい外してしまって

なにか目の端の下の方にあった気がするけど

「まあいいや」って、ゆっくり扉を開ける。

 

足を踏み入れた途端、ぼよんと弾き返される。

 

きっと泥棒は驚き、逃げてしまうだろう。

 

おまけに今日は傘を2本も使ってしまった。

扉に向かってその2本が泥棒を

「今か今か、弾いてやろうか」

と、思ってくれてるかもしれない。

 

 

去年に引き続き、今年の誕生日も雨だ。

初めて誕生日に雨が降った日を覚えている。

「あぁ、神様に見放された」

と、思った。

 

それまではなんとなく

理由とかがあるわけじゃないけど

神様に守られていると思っていた。

 

「さよなら」で悲しいのか

「一人前、おめでとう」で

嬉しいのかわからないけど

なんだかとても寂しかった。

 

もう、守ってくれる人はいないけれど

誕生日の今日、幸いにも雨が降り

私は傘を2本も使って

それは今玄関で私を守ってくれている。

 

私はまだ、神様に見放されたわけでは

ないかもしれない。